本研究の目的は, 小中の発達段階に照らしながら他者を学習場面に効果的に設定し, 他者とのかかわり合いの中から学習者が自分の言葉を豊かにしていく学習活動・単元を開発するための基礎的な知見を得ることにある。他者の設定については, 大きく二つに分けて考えた。一つめは「教材としての多様な他者の言葉」であり, 二つめは「協同的な学び」である。また, 「発信型の授業構成」を設定することで教室内外の他者との出会いをつくり出し, 協同的な学びを発展させることができると考えた。検証の材料として用いるのは, 子どもの学習記録や作品, 授業記録などである。結果として, 多様な他者に出会わせることによって子どもたちはより多角的・客観的に言葉をとらえ, 興味を持って教材に向き合うことができた。また他者を設定することで, 子どもたちは言葉をとおしてかかわり合い, 自分の考えの広がりや深まりを確かめたりすることができるようになってきた。このように他者の存在を通して, 学習者はより豊かな言葉を得ることができる。今後は, 実生活においても他者とつながる言葉をつくり出す学びへと発展させていきたい。