音楽科授業における音楽活動を可能にするものは, 様々な音楽的能力である。音楽的能力のうち, 特にその基礎となるものが音楽リテラシーである。本研究では, 音楽リテラシーの中でも聴唱力に着目し, 小学校3年生~ 6年生の児童を対象として調査を行った。調査内容は, 調査者が3音からなる階名聴唱課題13題をキーボードで弾き, 聞こえた音を児童に階名唱させるものである。本研究の目的は, 階名聴唱課題における階名の認知力と音高の再生力に着目して, 児童の聴唱力の発達の諸相の一端を明らかにすることである。評価項目は, ①すべての音の階名の正しさ, ②すべての音の音高の正確さである。研究の結果, 階名の認知と音高の再生の双方に共通して言えることは, 開始音にドが位置する課題と, 順次進行する課題において, 階名を認知しやすく, 再生しやすいことがわかった。また, 階名の認知と音高の再生の相違点としては, 前者では4度音程以上の跳躍進行の第2の音は階名を認知しにくいが, 後者では再生しにくいという傾向は認められなかったことが挙げられる。