「理科離れ」が深刻化しつつある昨今, この研究のグループでは, 「言葉の力」でメタフィジックな科学の面白さを生徒達に伝える試みに取り組み, 一定の成果を挙げてきた。本研究はその次なる展開として, 地域の自然環境と歴史風土に根ざした理科教育の可能性を追究し, 自然科学に加え人文科学や社会科学的視点をも含めた「風土サイエンス」の確立を目指した研究である。第1年次の研究では, 「森は海の恋人」や「山の幸は海の幸」, 「豊かな中国山地と瀬戸内海」などの話題を切り口とした授業がいかに生徒の好奇心と向学心を喚起するかを探った。「風土を題材とした理科教育」という取組みにおいて, 興味の喚起と日々の学習が車の両輪の如く相互に補完することで, さらに効果的な理科教育の方法論を展開できることを指摘した。第2年次にあたる本研究では, ふだんの理科学習から「切り口」にスムーズにアクセスするために, 風土サイエンスとの接点となる入り口を探り, その学習効果を検証した。具体的には「鉄の化学」, 「広島花崗岩の地質」, 「カキの生産」などの地域風土の特色を題材とした教材を開発し, 授業を実施し, 評価をおこない, その有効性を示した。