本研究では, 音楽科の学力向上を目指し, 学習者の自己評価・相互評価による音楽科授業の改善を試みた。第1の実践では, アルトリコーダーの指導に自己評価表・相互評価表を取り入れ, 器楽の基礎練習に有効であるかどうかを実験群・統制群のテスト結果から検証した。学習期間が短期間であったために, 有意な結果は出なかったが, 自己評価・相互評価によって, 学習に対する真剣さ, まじめさを引き出すことができた。
第2の実践では, アンサンブルの授業に, グループの自己評価とグループ同士の相互評価を取り入れた。自己評価表は, グループの活動目標や活動内容を把握させるのに役立ち, これによって活動自体が活性化し, 学習を効率良く進めることができた。また, グループ同士の相互評価表は, 他者の価値観との交流や, さらなる学習意欲をかき立てるのに効果的であった。また, グループとしての思いや, 他作品への批評を評価表に書くことは, 新学習指導要領でも目指されている「言語活動の充実」にも繋がるものとして, 今後いっそう取り入れていくことが必要になるであろう。