本研究の目的は小学校第3学年の理科単元「こん虫をしらべよう」において, デジタル教材を導入することによって, カブトムシの体のつくりに関する児童の理解がどのように変容するのかを分析・検討することであった。研究授業の実施学校及び対象児童は, 広島大学附属小学校1部・2部第3学年の児童78名であった。学習前後のアンケート調査や学習後の児童による感想文などの分析から, 次の諸点が明らかになった。(1)昆虫の体のつくり, カブトムシのすみか及びえさ, 昆虫の育ち方などについては, デジタル教材を導入したクラスとそうでないクラスでは差異が見られなかった。(2)デジタル教材を導入したにも拘わらずカブトムシの足の付き方について, 学習後の児童の正答者数はクラス全体の3分の1程度に止まった。この数字は, 広島市森林公園昆虫館学芸員による出前授業後のアンケートの調査結果(2007)とほぼ一致していた。(3)児童の感想文によると, 2部第3学年の児童39名のうち, 23名が学習後, デジタル教材の持つ認知的側面の長所を挙げており, 7名が意欲・興味・関心を示していた。