本研究は, 広島市教育委員会, 広島市立中学校, 広島大学附属東雲中学校, 広島大学附属中学校と広島大学教育学研究科が連携して, 文部科学省の伝統文化教材開発事業において開発したDVD教材の学習効果を実証・検証するため, 広島大学附属東雲中学校, 広島大学附属中学校, 広島市立井口中学校の, 社会科, 選択社会, あるいは, 総合的な学習の時間において, 開発DVD教材を使った授業を行い, 子どもたちの学習反応をまとめ, その結果にもとづいて, 教材の効果を判定しようとするものである。
第二年度の本年度は, 附属中学校において, 実施した社会科研究授業の結果を報告し, 昨年度に報告した附属東雲中学校における授業結果と比較・考察した。
考察の結果は, 次の4点にまとめられる。第1に, DVD教材の活用は, 授業そのものに対する興味や意欲を高める授業方法としても, また, 授業内容の知識・理解, 興味・関心, 意欲・態度を高める内容においても非常に効果があること, しかし, 第2に, 伝統文化を個別的な事柄と捉える認識や伝統文化に対する一般化については拡大することはあっても, 根本的な変容はみられなかったこと, 第3に, DVD教材を用いた今回の研究授業では文化全般としての伝統文化の認識という段階までの質的な変容をもたらすことができなかったことである。第4に, 教師が使いやすいようにDVD教材を改善することである。この点は, 第2, 第3の問題点を改良することにつながるものと推測され, 平成20年度のDVD教材の開発へとつなげた。