本研究の目的は, 小学校第4学年理科「電気のはたらき」の単元において, 子どもの思考や表現を生かした科学的なモデルづくりの観点から, 子どもの多様な学びや学び合いの可能性を探るとともに, 導入した授業方略の有効性を検討することであった。電流に対する子どもの見方や考え方に関する事前調査をもとに授業方略を開発・実践した結果, 乾電池2本の並列回路について, 自動車の通行や道路の合流点を基にしたモデルや電気と磁気を同一視したモデル, 電気に重さがあるというモデルなど, 様々なモデルを子どもたちが考えることができていた。また, 子ども同士の交流を通して, 自分のモデルをより明確にするために他者の表現を採り入れる事例が認められた。さらに, 子どもたちは自他の考えや実験の目的を明確に意識できるようになっていた。これらのことから, 回路中の電流に対する個々の考えや実験方法をキーワード化するという授業方略が一定の成果を上げたと考えられる。一方, キーワード化されたモデルが同じであっても子どもによって考えの細部が異なっている場合があることや, 教師の演示実験の方法が子どものモデルづくりに影響を及ぼす可能性のあることが示唆された。