昨年度は, 日本文学・日本文化を支え続けた漢文が明治以降も思考の基盤であり続けたことを明らかにし, 現代に生きる子どもたちにとっても自身に繋がる目線でのアプローチが可能であり効果的であることを可視化した。それは古典重視の方向に舵を切った新指導要領の具体化において, 単に旧来の指導を踏襲するのでない方向性を模索した結果であり, 本年度はそれを承けて, 実施可能な具体的な授業構想に取り組んだのである。読解のみならず言語活動, 表現活動においても様々なアプローチが考えられたが今年度は次の3点に留意して提案を行った。教科書教材または教科書教材と関わりのある作品を選ぶこと, 国語科の学習として位置づけられるだけの内容と表現を有すること, 暗唱可能な分量であることである。これらをふまえて葉山嘉樹「セメント樽の中の手紙」と杜甫「石壕吏」, 八木重吉「陽二よ」と陶潜「責子」の授業提案を行うとともに, 現代文学と漢文との豊かな関わりを提示することでさらなる学習の可能性を示した。来年度は, 中・高校生が日常触れる機会の多いであろう, あるいは触れて欲しい近現代の作品と漢文を結んでの授業実践に取り組みたい。