本研究は, 小学校児童が算数の文章問題を作る活動を通して, 四則演算の構造を明らかにすることができるような文章題を作成するコンピュータソフトウェアの開発と, 実際の授業場面における効果的な運用の在り方を研究することを目的としている。新しい学習指導要領では, 算数科において事象を数学的に解釈・表現することを重視することがあげられている。本研究では, 児童が文章問題を作成する中で, 事象を数学的に解釈する力を個別に高めることができるのではないかという仮説に基づき研究を進めてきた。本年度は, 継続研究の研究2年目にあたる。初年度に開発したソフトウェアの改良, ソフトウェアの開発及び授業における実際の運用方法を明らかにしながらも, ソフトウェアを用いた指導と従来の指導とを今後, 比較研究していくための基礎研究として, コンピュータを用いない文章題指導の授業についても併行して授業研究を行った。ソフトウエアの改良・開発においては, 抽出児童の継続的な観察記録(デジタルビデオカメラによって記録)をもとに, 昨年度に引き続き, 学年段階に応じたものをつくりだすことを試みた。また, 実際の授業における運用においては, コンピューターを使った個別の活動と合わせて, 集団学習場面における文章問題の構造に関する気づきを学級全体で明らかにし, 一般化するとともに, 個と集団の相互作用を重視した授業過程を開発しようとした。