本研究は広島大学附属高等学校(以下, 附属高)生徒の進学適性に対する自覚の形成に, 大学史教育がどのように寄与できるかを考察しようとするものである。附属高が進路学習の一環として行う大学訪問のプログラム内に, 広島大学を例にして日本の大学教育制度に対する理解を深めさせる講義「日本の大学の歴史」を組み込み, その前後にアンケート調査を実施して, 生徒たちの大学選択に関する意識の変化を調査した。その結果, 大学史の講義は実施の前後ともに生徒の興味を引き, 実施後の調査では40.4%の生徒が講義内容に興味を覚えたと回答した(覚えなかった12.6%)。また58.2%の生徒が受講前の期待に応える内容であったと回答した(期待はずれ7.3%)。講義内容にも58.7%が満足し(不満足6.6%), 23.5%の生徒がこの講義を同年代の他の高校生にも推奨したいと回答した。大学史の講義を他の生徒に勧めたい理由として「大学のことをもっと知った上で進路を決めた方がいいと思うから」「この講演を聞かないと, 広大について分からないと思うから」といった意見も寄せられ, 大学史教育が生徒の進学適性に対する自覚の形成に一定の意義を有していることがわった。