保育場面では, 子どもが模倣をすることにより, どのような感情が生じたり育ったりしたかが重視されている。しかし, 幼児の模倣に関する先行研究では, 感覚や感情的側面が十分に考慮されてこなかった。そこで, 本研究では, 感覚や感情と模倣の相互作用過程やその過程における保育者の役割を検討するために, 年少と年長クラスの園児ならびに担任保育者を対象に観察を行うとともに, 保育者にはインタビューも実施した。その結果, 模倣が生起する前提として, 安心感, 安定感, 信頼感, 肯定感などが, ある程度育っている必要があり, その上で, 他者の行為や活動を見て, 楽しそう, 面白そうといった感情が生じた時に模倣が生起する, そして, 模倣することにより, 楽しいという感情が自分の中にも起こり, さらに, 楽しいという感情により, 模倣した行為や活動を反復したり展開したりする, また, このような過程には実感が伴われるとともに, 行為や活動をふりかえることにより充実感や満足感なども感じる, と考えられた。最後に, 以上の考察に基づき, 感情を基礎的な感情, 活動中の感情, 活動後の感情, という3つのレベルに整理することが提案された。