本研究の目的は, 「森の幼稚園」カリキュラムの中で展開された保育者と幼児の活動を対象に, アフォーダンスの視点を用いて分析することで, 素朴な自然環境は保育実践に何をもたらすのかを検討することである。
研究の手順は, 次の通りである。(1)「森の日」の活動を撮影し, フィールドノーツに記録した。(2)記録された映像データの中から「夢中度」に関する評価尺度を参考に, 幼児が活動に没頭している場面を抽出した。(3)抽出されたエピソードの中から, 素朴な自然環境としての木(細木)に注目し, 木(細木)が保育者や幼児にもたらす行為について分析した。
研究の結果, 保育者のI男(4歳児)への遊びの提案, 女児たちと保育者の一緒に遊ぶという行為, I男とK男の一緒に遊ぶという行為, 女児たちの遊びの継続という一連の流れの中で見られる木(細木)を「揺らす」「曲げる」という行為をもたらした要因として, 「即応性」「一人でも曲げることができる」「しなる」「揺らすと雨粒が落ちる」「強く揺らすと雨粒が飛ぶ」「弾力性」「揺らすと音が鳴る」「揺らすことで変形する細さ」「反発する力の強弱や揺れ幅を変える」などの特性があることが明らかになった。