設計による問題解決を重視したロボット設計製作題材の有効性に対する認識が定着しつつある。中でも人命救助を扱う題材は, 技術だけでなく人への優しさなどそのあり方まで考えさせる点で優れており, 2年前から共同研究を実施している。学習活動の中心となるのは, 自由度の大きい設計・製作であり, その指導には周到な準備が必要となる。
本研究では, このような課題に取り組む際の考え方について, 設計論と問題解決の観点から整理し, 実践と考察を行った。
文献研究など事前の検討から以下の点が示唆された。(1)設計は必要となる機能のほかに軽さや丈夫さなど複数の評価項目について最適値を求める多目的最適化の問題であり, トレードオフが発生する。(2)モータやギヤの種類と個数, 構造材などの最適な組合せを求める問題とそれらにおけるパラメータ最適化を同時に行う問題であること。(3)生徒がより良いものを設計する際の困難さは, 設計案の評価即ち新学習指導要領において導入された「技術の評価」に関わるものであること。
実践と結果の考察により, 位置関係の干渉の解決により他の部分の設計に影響を及ぼす場合などがあり, 初期の段階で走行体を確定し自由度を限定する方法や, 初期段階で実現可能性の高い案に到達させる方法が考えられた。