本研究の目的は, 中学校1年生を対象として, 聴取力を中心とした音楽科学力調査を行い, 小学校修了程度の内容をどの程度獲得しているのかを明らかにすることである。音楽科学力調査問題作成にあたって, まずわが国でこれまでに行われた音楽科学力調査の内容を概観し, それを参考にして, 聴取力に着目した音楽科学力調査問題を作成した。附属中学校4校で調査を行った結果, 拍子を聴き分ける力, 速度を聴き分ける力, 聴取した音と楽譜を照合する力はかなり育っていることがわかった。それらに比べて, 長調・短調を聴き分ける力は, やや成績が低かった。楽器の音色を聴き分ける力は, 楽器によって正答率にかなり差があることがわかった。ティンパニ, シンバル, フルート, トランペット, ヴァイオリンは80%以上の正答率であり, チェロは75%の正答率であった。これに対して, クラリネットとホルンはともに40%台の正答率であり, これらの楽器の音色を聴き分けることは難しいことがわかった。