本研究では, 中学校理科における「身の回りの物質」と「化学変化と原子・分子」をつなぐ小単元を開発・実践し, 粒子概念の育成と深化を図る学習指導のあり方について検討することを目的とした。気体による現象や固体・液体・気体のそれぞれの状態の物質の燃焼を粒子モデルで考える活動を取り入れた4時間の小単元を開発・実践した結果, 生徒は粒子モデルを用いて物質の三態を表現することができるようになった。また, 粒子モデルで表現する際の観点として, 状態変化前後の粒子の数を同じにしなければならないことや粒子の運動を矢印で表現することが生徒の意見交流の中から学習集団の同意事項として承認されていくという成果が得られた。状態変化の前後で粒子の数が表現の観点に挙げられたことは, 「化学変化と原子・分子」で学習する化学変化の前後における質量の保存を理解したり, 化学式や化学反応式を作ったりする学習に効果的に働くと考えられる。さらに, これまでの原子・分子モデルは静的で思考のための符号に過ぎなかったが, これに運動を表す矢印を付け加えることで, 化学変化をよりダイナミックなものとして生徒に理解させることができることが示唆された。