本研究は,学習者が自分のまわりの他者と出会いかかわり合うことをとおして,自分自身の言葉の世界を広げ,自らの学びを探究していくことができるようにするための効果的な指導法を開発していくことを目的としている。そこで,小学1年生と小学4年生において,他者の言葉として教科書以外のテキストを位置付け,言葉をとおしたかかわり合いの場を意図的,計画的に設定し,教科書本文との比較をとおして読みを深める実践を試みた。1年生では,教科書と絵本を比べることによって,共通点や相違点に気付き,物語の本質的なおもしろさに迫っていくことができた。4年生では,自分の読みをもたせることを大切にした結果,子どもたちは自分たちの考えと比べて感想や疑問を抱きながら本文を読み,主体的な読みを生み出すことができた。二つの実践をとおして,学年やねらいに応じて他者の言葉を設定することの有効性がわかった。その際,他者の言葉を吟味して選択するとともに,比べ方や比べる視点を明確にすることが必要であると感じた。今後は,他者の言葉として,テキストとともに学習者同士のかかわり合いを,授業の中に効果的に生かすことのできる単元づくりを試みたい。