本研究では子どもの誤概念,素朴概念をより科学的概念へと転換するための試みとして,『血液のはたらき』の単元においてぬり絵付き科学読み物を理科授業に導入し,その効果を検証した。その結果,次の点が明確になった。①問1の結果より,科学読み物講読後も,血液循環に関する科学的な理解は約6割の児童にとどまり,約4割の児童に誤概念が引き続き認められた。②血液循環に関する誤概念のパターンはM.W. アノーディン(1986)らの調査結果と類似していた。③ガス交換を担う肺の働きと血液循環を担う心臓の働きを混同している児童が認められた。④口からの吸気と排気に含まれる気体について正答しているにも拘わらず,運動時による呼吸の変化について説明できている児童は1割にも満たない。日常生活への適用に関して言えば,食べ物の消化・吸収に関する児童の理解度は高い。⑤運動時の心臓の働きについても,約4割の児童が酸素を供給すると回答しているが,栄養分を供給したり,二酸化炭素や老廃物を運び出したりすると回答している児童は少ない。⑥科学読み物の講読やぬり絵活動が子どもの興味関心や意欲などを高める上で有効であることが分かった。