本研究の目的は,平成20年版学習指導要領における新単元「防災ネットワーク」を事例にして,附属3校による授業開発と実践と相互検証を行い,社会科新単元の新たな授業のあり方を示すことにある。
最初に,災害社会学の成果に基づき,「災害」を「社会システムと地域コミュニティが,異常な自然災害に遭遇し,社会災害化(システムとコミュニティへの被害)すること」と定義づけ,中心概念とその関連を明らかにした。次に,「災害」が社会災害として現象化する段階を特定した上で,授業開発の視点として,「学習の中心となる『災害』の段階の明確化」,「『減災』に向けての学習過程の構築」,「社会システムと地域コミュニティにおける学習対象の明確化」の3点を示した。これらの視点に基づき,①防災時の減災を目指す防災ネットワークを事例とする「どうして?どうする?地震大国日本と災害情報」,②災害時の減災を目指す防災ネットワークを事例とする「東日本大震災から見る情報社会」,③東日本大震災を契機に,防災時の減災を目指す防災ネットワークを事例とする「わたしたちの生活と情報-防災ネットワークを通して-」を附属3校の開発事例として明らかにした。