広島大学附属幼稚園では,『子どもの経験から振り返る保育プロセス』(秋田他,2010)を用いた保育カンファレンスを,外部に対して公開し,一緒にカンファレンスを行う試みを行った。本研究は,内部の保育者にとっての,公開カンファレンスのメリット・デメリットを明らかにするとともに,公開カンファレンスを実践しての気づきや示唆を得ることを目的として行われた。
内部の保育者からは,今までない新たな視点を与えられるというメリットが多く示された。保育者以外が事例を収集し,ファシリテーターが進行をし,自園が有する特有の文化や価値観に縛られていない外部参加者が発言するという,普段とは異なる要素の加わった公開カンファレンスが営まれることで,自園のカンファレンスにはない「新たな気づき」を得られる可能性が示され,特にベテランの保育者にとって有効である可能性が示唆された。同時に,特定の子どもに対する援助を探る際には園内のみで行う方が有効ではないかとの意見も示され,メリット,デメリット双方が浮かび上がった。また,公開カンファレンスを成立させる要因として,ビデオ映像や,「安心度」・「夢中度」という評価基準の存在の意義が示された。