本研究では,児童生徒が「理科における学びの愉しさ」を実感するために,さまざまな授業方略を取り入れた授業開発および授業実践を行った。小学校の実践では,「ものの重さ」を取り上げ,誤反応を起こしやすい概念を含んだ課題を意図的に提示することで,児童自身が間違った理解をしていることに気づかせ,修正する授業展開を試みた。中学校の実践では,都市の夕立の学習を通して,都市気候と人間生活との関わりを考察させる授業を行った。生徒は,協同的な学びを通して,ゲリラ豪雨のような異常気象は,人間の生活環境の変化に深い関わりがあることを認識することができた。高等学校の実践では,多酸塩基の緩衝作用の原理について考えさせた。中和滴定の進行に伴って緩衝作用がみられる部分について,その原理を粒子モデルや反応式を使って説明する探究活動を行った。
いずれの授業実践も,実験結果の予想や分析,表現,身近な現象と人間生活との関わりなどについて,児童生徒自らが問いを内発し,疑問を認識し,現象を科学的に説明することを要求する取り組みを行うことで,理科を学ぶことの有用性や意義を実感でき,「学びの愉しさ」を得ることができた。