学部・附属学校共同研究紀要 40 号
2012-03-26 発行

発達に課題のある幼児の集団への適応に関する実践的研究(2) : 年中児クラスにおける個別指導と園内カンファレンスを通して

A practical study on the adaptation of a child with special needs to the peer group in the kindergarten.
大野 歩
林 よし恵
田中 恵子
落合 さゆり
全文
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AnnEducRes_40_47.pdf
Abstract
近年,保育現場において,子どもの理解や保育の方法を議論する場として注目されている保育カンファレンスは,子どもの理解や支援の検討にあたり,グループダイナミクスによる効果が期待できる。本論では,園外の専門家との協働による保育カンファレンスにより,発達に課題のあるA児に対する支援を検討した実践事例を報告する。

A児は進級当初,他児のモノに興味をもち,無断でこれを取り,思い通りにならないと癇癪を起すといった姿が見られた。これを受けてカンファレンスではルーティンの見直し,声かけの方法の提案などが行われ,根気強い「貸して-いいよ」といった会話スキットの強化が行われた結果,後期には他児の弁当やカバンなどに興味をもった際に言葉で依頼を行うA児の姿が見られるようになり,他児とかかわることに喜びを感じるようになった。

また,本年度は療育機関関係者も招いてカンファレンスを行ったことにより,新たな視点でA児の姿を捉えることができ,園での支援を工夫することにつながった。

今後は,A児が年長児クラスに進級することから,進学準備・小学校との連携を視野に入れたカンファレンス・支援体制を検討していくことが求められる。