本研究は,教育実習が実習生だけでなく指導教員の成長を促すものであることに着目し,教育実習を通して実習生と指導教員が相乗的に高まる状況を確認するとともに,そのメカニズムを考察することを目的とする。今回の研究では次の3点が明らかになった。①新任教員は,実習生にとっては目指すモデルとして身近であるということと,新任教員にとっても実習生との呼応関係を非常に意識しており,そのことが相乗的な向上につながっているということが分かった。今後は呼応関係を積み上げながら,保育として必要な内容を深めていくことが望まれる。②熟達教員は,実習生にとっては力量の差が大きいために効力感や職業的同一性が低下せざるを得なかった。今後は力量の差を克服する指導が望まれる。③今後の展望として,指導教員と実習生によるカンファレンスの中で,「子ども」のとらえや,それに対する教師の援助を具体的に深めていくことが,両者の相乗的な向上につながっていくのではないかということが見えてきた。