本研究は,本校がこれまで策定してきたESDカリキュラムの充実を図るために,世界遺産学習に焦点づけ,世界遺産「宮島」を事例にした教材開発と授業実践を行い,実証的にESDカリキュラムの有効性を高めることを目的としている。本研究の意義は,カリキュラム構成と授業開発の点から次の二点にまとめることができる。第一は,開発授業の実践を通して,観光地の立地条件を多様な観点から読み解き,多くの児童が持続可能な社会の仕組みについて理解し,今後の宮島観光の持続性について意見を形成できたことから,4年生段階において世界遺産学習をカリキュラム上,位置づけることの妥当性を明らかにしたことである。第二は,本研究では,「持続性」をキーワードに世界遺産は「持続性」を実際に証明した社会事象であると規定し,「持続性」を可能にした社会を読み解く授業構成論理を示し,実証的にその意義を明らかにしたことである。今後,附属小型ESDカリキュラムの改善を図るために他の事例についても実践を深め,実証的検証を図り,小学校段階におけるESDカリキュラムの可能性について研究を深めたいと考えている。