本研究の目的は,特定の教科の授業に焦点を当て,児童が普段経験する困難な場面をクラスで話し合い,その対策を考えることで,1人ひとりの児童が授業に参加できるようなクラス作りを行うことであった。また,先行研究から,クラスでワーキングメモリの最も小さい児童がしばしば他児の発言を聞いていないことが明らかになっているが,このような他児の発言を聞くことの困難さが,他の児童にも全般に見られることを確認し,クラスでその問題を共有することも本研究の目的であった。その結果,算数の授業において,話し合っている内容について途中で分からなくなり,話し合いについていけないことがあることが児童により報告され,同じような経験を多くの児童がしていることが確認された。そのような場合,教師に分かったかどうか尋ねられても,児童は,自分から「分からない」とは言いにくいことも報告された。本研究の話し合いを通して,このような授業の課題が教師と児童によって共有されたことに本研究の話し合いの意義があった。