本研究では,「安全環境」の評価と提案能力を育成することを目的としている。そこで本年度は,4年生児童(39名)を対象とし,身近な生活環境(自宅,通学路,学校)に関する「安全・危険」のテーマでアンケートと,それを元に「五感アイコン」を用いた「安全な環境」の提案のためのプレワークショップを行った。また,公共的な社会環境での提案能力の育成を目的として学校周辺のフィールドワークを実施し,「安全」を身体的な危険の問題のみならずより幅広く「安全環境」として学習させるための方法論として3つの「おかげアイコン」を開発し,それぞれの環境に対する評価と提案方法についてワークショップを行った。結果として,以下の二点が明らかになった。まず第一に,自宅,通学路,学校,学校周辺の「安全」評価と提案に大きなばらつきがあった。第二に,「五感アイコン」では「みる」「さわる」のアイコンに表現が偏る一方,「おかげアイコン」ではその使用に多様性が認められた。その意味で,「おかげアイコン」による授業構成は,「安全」を防犯・防災・交通安全のような一般的な安全概念を超えた発想を促す効果があったと考えられる。