昨年度は随筆『枕草子』で小中の連関を見たが,高校でも新学習指導要領実施となった今年度は,物語である『竹取物語』を小中高三者を視野に考察することで,改めて新しい視点を持つことができた。たとえば三者ともに重視する音読については,小学校ではリズムや古語に慣れ,語り口の面白さに気付き,中学校では歴史的仮名遣いや古語を知って古文特有のリズムを味わい,高等学校では音声(語音)の層,意味の層,提示対象の層を考えることで,言葉の芸術として物語を捉え直した。また,アプローチの面でも,小学校では言い換えや日頃の物語学習でも用いているスキーマを活用して現代語の翻案を読み,考えた。中学校では,言葉を軸に電子黒板等の機器の活用や身体的活動を通して実感的に知見を広げ,考えた。高等学校では,助動詞等の学習をふまえて,生徒自身による授業構想を軸に着眼を掘り下げ読解を深めていった。古典と出会う小,世界を広げる中,深く掘り下げる高という段階性とともに,作品による差異も明らかになったといえよう。総じて今の地平で古典を考える小学校,未知の古典に迫ろうとする中学校,普遍への跳躍を求める高等学校,と考えることができる。