本研究では,森の幼稚園の在園児と卒園児を対象に体力・運動能力を調査し,一般的な集団と比較することで,森の幼稚園の保育環境と体力・運動能力との関係を明らかにした。研究1ではMKS幼児運動能力検査を用いて,森の幼稚園の在園児の体力・運動能力を測定した。その結果,森の幼稚園の在園児の体力・運動能力は一般的な幼稚園・保育園の幼児のそれと大きな差はないことがわかった。研究2では,小学校で実施された新体力テストの結果から,森の幼稚園の卒園児の体力・運動能力を調査した。その結果,森の幼稚園の卒園児の体力・運動能力は一般的な幼稚園・保育園を出た児童のそれと同程度かそれ以上であることがわかった。これらの結果から,森の幼稚園の保育環境は幼児の体力・運動能力に対してあまり大きな影響を持たないが,小学校入学以降にポジティブな効果として顕在化する可能性があることが示唆された。幼児期に森での様々な活動を経験する中で,それに伴う動きのバリエーションを身につけることができており,それが就学後の体力・運動能力の基礎となっていると推察される。森という環境が,幼児の長期的な発達に影響を与えることが示唆された。