本研究では,科学者が学問を探究していく上でどのように思考し,その思考を発展させ,どのように論理展開していくか,そうした思考の過程を内容として盛り込む授業構成によって,生徒に科学者の思考を追体験させることで,学問の場において,どのような思考の展開が必要となるかを伝える方法を研究した。そこには,広島大学附属福山中・高等学校で研究に取り組んでいる,「クリティカルシンキング」の手法を具体的な事例の中で伝えるという目標も含まれている。
授業は,科学者の生徒と同じ年代からの思考の変遷をたどる構成を取ることで,生徒がより身近な存在として科学者を捉え,好奇心を抱く中で,科学者の思考過程に触れることができたと考える。こうした試みは,生徒がこれまでに受けたことのない体験だったことが,生徒の記述から読み取れる。したがってこの授業の内容そのものが,この研究の最大の成果だと考えている。