本研究は,論理的な図形認識を促すために開発された小中一貫の図形領域カリキュラムのもと,移行前期における小学校第5学年から論証期における中学校第2学年までの4年間の図形指導を受けてきた生徒達を追跡することによって,生徒の図形認識の変容を捉え,小中一貫の図形領域カリキュラムの有効性を明らかにすることが主目的である。本稿での対象生徒は中学校2年生であり,小学校5年生から本研究の対象になっている生徒である。単元は「図形の性質と証明」で,二等辺三角形の性質を考える学習課題を設定した。この課題は作図と証明活動からなる課題で,作図は多様なアプローチができ,多様な証明が考えられる課題である。実験授業後に,カリキュラムの有効性をパフォーマンス課題,全国学力調査の類題との比較,小学校5年生のときとの同一問題での比較及び論理的な図形認識に関する面接調査において評価した。その結果,小中一貫の図形領域カリキュラムのもとで,経験的認識から論理的な認識へと促す指導を行うことによって,生徒の論理的な図形認識を促し,論証理解の困難性を克服するのに一定の成果をあげることができたと考える。