本研究では,知的障害のある児童生徒の自己肯定感を育む授業モデルを開発し,授業研究を通じ,授業モデルの有効性の検証を行っていく。昨年度までの研究においては,自己肯定感を育む授業モデルの要素として,5つのポイント(1.児童生徒の興味関心のある教材や題材を準備すること,2.うまくいかないことをやりとげる現実度を上げること,3.活動量や活動の主導権を児童の実態を考慮して適切に配置すること,4.褒める認める場を設定すること,5.集団の力を利用すること)があり,ポイントに基づく授業づくりが有効であることを明らかにした。また,このポイントは,授業をふり返る視点や児童生徒の変容を捉える視点になることも示唆された。 今年度の研究では,ポイントを意識した授業づくりをしていきながら,児童生徒の個々の変容を捉えていく。個々の変容のデータを集約し,小学校・中学校という発達段階に応じた,段階的系統的な指導のあり方や体系的な授業づくりを検討し,教材選定や単元構想の重要性をもとに自己肯定感を育む授業モデルを提案する。