本研究の目的は,クラスでワーキングメモリの小さい子どもが日本の小学校の授業場面でどのような行動を示すのかを明らかにし,学習遅滞や発達障害のリスクのある子どもに対する学習支援の枠組みを構築することである。本年度は,国語科に焦点を当て,ワーキングメモリの小さい児童の学習支援に有効な教授方略の効果を検討した。前年度の研究に引き続き,小学校4年生のクラスで最も得点の小さい者3名を観察対象児とした。そして,普段の国語の授業6時間で観察を行い,教師または児童の発話に応じて,観察対象児の挙手および授業態度の記録を行った。また,おおまかな文章全体の把握から部分への精緻化と,構成部分相互の比較を通した全体への統合化を順次行いながら,文章の状況モデルを構成するという文章理解のプロセスを,マトリックス(黒板)に表現し,可視化するという研究授業を3時間行い,観察対象児の観察を行った。その結果,普段の授業に比べ,研究授業では,観察対象児の挙手率や授業参加率が高くなる傾向が見られた。