学部・附属学校共同研究紀要 41 号
2013-03-22 発行

音楽科の特性に応じた思考を育むカリキュラムの開発 : 小学校低学年を中心に

A study of the curriculum development for fostering children's thinking ability : Focusing on the music classes of the lower grades of elementary school
近藤 知美
奥本 絢子
全文
1.06 MB
AnnEducRes_41_23.pdf
Abstract
本研究の目的は,児童一人ひとりの自発的な音楽表現を起点として音楽科の特性に応じた思考を発展させ,さまざまな音楽文化に能動的・主体的にかかわっていけるような,音楽科における次世代のカリキュラムの開発を行うことにある。初年度の取り組みとして,生活の中での子どもたちの学びの履歴と,学校における教育課程との接点を探りながら,学びの総体としてカリキュラムを捉え,「児童の音楽的思考を育む」ことを目標に授業を行い,児童の表現を分析・検討した。自分にとって価値のある表現を見出していくプロセスは,どのような表現をするかを思考する上で重要な環境づくりとなるが,母語を出発点とし,発達段階に応じた適切な制約を設け,楽譜を介在させない活動のなかで,児童はそれぞれに「なじみのある」音楽とのかかわり方を模索し,音楽的思考を働かせ,多様な表現を生み出した。考察を通して,児童が実感を伴って感情移入できる題材,心地よく意欲を喚起されるような約束,学年進行に応じた手だてや難易度の設定,拡散的思考や発想による音楽的な工夫への肯定的評価など,児童の音楽的思考を促すために有効な題材設定,学習過程,働きかけを見出すことができた。