本研究では,科学者が学問を探究していく上でどのように思考し,どのように論理展開していくか,そうした思考の過程を内容として盛り込む授業構成によって,生徒に科学者の思考を追体験させることで,学問の場においてどのような思考の展開が必要となるかを伝える方法を研究した。 授業は,科学者の生徒と同じ年代からの思考の変遷をたどる構成を取ることで,科学者を身近な存在として捉えながら,科学者の思考過程に触れることができたと考える。また,最も確からしい答えに辿り着く手法,すなわち,根拠に基づいて思考していくという実際に焦点をあてた構成によって,科学者の思考過程を生徒に伝え,学ばせる方法を確立できたと考える。学年全体への授業後に,1クラスのみを対象に質疑応答やフリートークの時間を設定し,その効果についても検討した。「色々なことをやって結びつける思考が面白いと思った」,「全く別の新しい視点でものごとを捉えることの大切さを学んだ」など,こうした試みは,生徒がこれまでに受けたことのない新鮮な体験だったことが,生徒の記述から読み取れる。したがってこの授業の内容そのものが,この研究の最大の成果だと考えている。