広島大学心理学研究 7 号
2008-03-31 発行

母親の被養育経験が子どもへの養育態度に及ぼす影響

The influence of mothers' experience in being brought up on her parenting attitudes to her children
木本 美際
全文
13.8 MB
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Abstract
本研究は、一般の母親を対象に虐待の実態を把握し、虐待の世代間連鎖率と連鎖の抑止要因を検討することを目的とした。質問紙調査においては、一般の母親においてもかなりの高率で虐待の世代間連鎖が生じており、虐待の発生防止には、夫の育児サポートおよび夫との関係が重要であることが示された。また、虐待の世代間連鎖を抑止する要因には、サポート資源の豊富さも重要である可能性が示唆された。面接調査では、被虐待経験の有無により、被養育経験の捉え方、および親イメージが大きく異なることが示された。虐待の世代間連鎖が生じている人は、育児へのサポートが少なく、また親から依存欲求を満たしてもらえなかったために子どもとの間に役割逆転が生じていた。連鎖が生じなかった人は、子ども時代に親以外の大人との情緒的交流を持つことができていたために、葛藤を子ども時代に解消できていたことが示唆された。
著者キーワード
虐待
世代間連鎖
非臨床群