本研究の目的はナルシシスティックリアクタンス理論の有効性を実験的に検討することである。山香・深田(2006)の方法論的問題点を改善した上で、ナルシシズム状況(ナルシシスティック状況、通常状況)とナルシシズム特性(高群、中群、低群)を独立変数とする2要因実験参加者間計画に基づく質問紙実験を実施した。実験参加者は189名の男子大学生であった。実験参加者は、女性に対して男性が性的強要を行う場面を描写したシナリオを、男性の立場に立って読み、後の質問に回答した。通常状況に比べ、ナルシシスティック状況は、リアクタンス喚起の指標である主観的反応(禁止された行動の魅力、女性に対する敵意、自己支配感)と自由回復行動意図(自由の行使意図、女性への攻撃意図)を増加させることが見出され、ナルシシスティックリアクタンス理論を支持した。これに対して、ナルシシズム特性は、理論と矛盾する結果を示した。