本研究の目的は怒りを表象する単語(怒り語)を、情動強度の観点から分類することであった。怒り語間の情動強度の相違を数的に捉えるために、予備調査において選出された10の怒り語を2語ずつ一対比較させる調査冊子を作成し、どちらの怒り語の方が強い怒りを連想させるか、もしくはどちらとも同程度の強さの怒りを連想させるかを大学生100名に回答させた。同程度の強さの怒りを連想させると回答された数に基づいて怒り語間の距離行列を作成し、クラスター分析を行った。その結果、「腹立つ」「腹立たしい」「むかつく」「怒り」「怒る」「立腹」が第1クラスターを、「激怒」が第2クラスターを、そして「むかむか」「いらいら」「むっと」が第3クラスターをそれぞれ形成した。各怒り語が他の怒り語よりも「強い怒りを連想させる」と評価された比率に基づいて各クラスターの特徴を解釈したところ、第1クラスターの怒り語は中程度の怒り、第2クラスターは強い怒り、第3クラスターは弱い怒りを表象していた。