対人印象に及ぼす自己卑下呈示の効果が、送り手の立場によって異なるのかどうかを明らかにするために、大学生209名を対象とした実験を行った。実験は賞賛に対する返答として何らかの自己呈示が行われるというシナリオを用い、実験計画は送り手の立場(上/下)×呈示方法(自己卑下呈示/自己高揚呈示/統制条件)であった。その結果、対人印象の中でも社会的望ましさおよび個人的親しみやすさの次元においては、賞賛に対する自己卑下呈示は、自己高揚呈示よりも高く評価されることが明らかになった。一方、活動性の評価に関しては、賞賛に対する自己卑下呈示はもっとも低い評価となることが示された。送り手の立場によってこのパターンが大きく変わるという結果はみいだされなかった。これまで自己卑下呈示は望ましい印象を与えるのに有効であるとされてきたが、本研究の結果から印象の次元によってはネガティブとなる可能性も存在することが考察された。