本研究は, 実際には起こりえない現象についての因果推論に呪文が与える影響を検討することを目的とし, 3~5歳児に一般的な因果理解と魔術的な事柄に対する信念を尋ねる質問調査と, 箱の中に入れたものが消える現象を見せ, 呪文の有無による反応の違いを見る実験を行った。その結果, 呪文がある場合の方が原因を魔法や呪文に帰属する傾向が高くなることが明らかとなった。しかし, 驚きの程度は, 年少児は年長児にくらべて低かったが, 呪文の有無や魔術的な信念の高低によって異ならなかった。これらのことから, 3~5歳の幼児は, 年齢や魔術的な信念の高低にかかわらず, 日常的な因果理解に適合しない現象の原因を呪文や魔法へ帰属する傾向があることが示唆された。