本研究では, 高齢者が各心理社会的課題にどのように取り組んでいるのかを, 対象者の基本的属性, 心理社会的課題への取り組み方, 生活歴などとの関連から総合的に検討することを目的とした。20名の対象者から得た語りを, 第8課題を構成する2つの指標(過去および現在の人生への取り組み方, 自分の死への取り組み方)から分類し, 5つの類型を抽出した(統合群, 過去の統合・死の否認群, 後悔・死の統合群, 後悔・否認群, 語りなし群)。分析の結果, 第8課題への肯定的な取り組みは, 他の7つの心理社会的課題への肯定的な取り組みと関連しているが, これは自分の死や過去の危機的状況からある程度距離を置いているためと推察された。さらに過去の葛藤を統合するには, 自分のあり方への肯定的な取り組みが重要であることが示唆された。また, 特に女性は青年期前後に主体性を発揮しにくかったことがうかがわれ, 自己のあり方への取り組みにはコホートと性別が関連していることが指摘された。今後は, 質問項目, 分析方法を精緻化し, その妥当性を検討することが課題として考えられた。