梅津(2007)は, 社会科教育で育成する能力に関して「社会科学力の構造と関心・意欲・態度との関係モデル」を提唱している。本研究ではこのモデルに基づいて, 社会科学力の一つである批判的思考力と社会科学力の関連要因である社会的事象に対する関心・意欲と社会的態度について次の2点を検討した。(1)批判的思考力, 社会的事象に対する関心・意欲および社会的態度の各得点が中学校の学年進行に伴って上昇傾向にあるか否か。(2)批判的思考力の育成が社会的事象に対する関心・意欲の促進や社会的態度の獲得に影響するか否か。中学生のデータに基づく分析の結果, いずれの得点においても有意な学年差はほとんど見出されなかった。しかし, 群間比較とモデル検討の結果, 批判的思考力が高い生徒ほど社会科の学習や周囲の人々に対して高い関心・意欲を示し, 身の回りや社会的な事柄について積極的に理解しようとする社会的態度をもつ傾向にあることが明らかになった。