本研究では青年期における希望と挫折経験及びアイデンティティ, 目標との関連を検討することを目的とした。研究Iの質問紙調査の結果, 希望とアイデンティティは全ての側面, 目標とは確信度, 準備性, 満足度, 達成手段において関連がみられた。また, 過去の挫折経験の有無によって希望の高さに差がみられないことが示された。研究IIでは, 挫折経験と未来の捉え方に関して半構造化面接を行った。その結果, 挫折経験以前は「自己信頼感」を持ち, 未来に対しては『漠然とした見通し』『肯定的見通し』『具体的見通し』『短期的見通し』を持っている。しかし, 挫折経験以後は見通しを失い否定的感情に支配される『希望の喪失』を引き起こし, 「自己不信感」に陥ることが示された。また, その後「努力」をしていく中で他者の支えや課題達成によって自信が回復し, 希望も回復するという過程が見出された。最終的には, 「肯定的意味付け」あるいは「否定的意味付け」の段階に至ることが示され, このような挫折経験の意味付けに他者の支えが影響していることが示唆された。