個人化が進むと同時に, 家族の親密さ, 絆の希薄さが指摘されている現代家族にとって, 家族の絆, つまり家族としてのアイデンティティは重要な意味を持つと考えられる。林・岡本(2003, 2005)は, 家族アイデンティティを「自分は家族の一員であるという感覚が, 斉一性と連続性を持って自分自身の中に存在し, またそれが他の家族成員にも承認されているという認識」であると定義している。本研究では青年が青年期前期に体験した家族内葛藤について調査し, 青年期前期の家族内葛藤と青年期後期の家族アイデンティティの発達レベルの関連性を明らかにすることを目的とした。その結果, 青年期における家族アイデンティティは, 青年期前期からの家族内葛藤を乗り越えることにより, 形成されることが示唆された。また, 家族内葛藤の収束と家族アイデンティティ発達にとって, 現在, 青年が親の対応についてどのように捉えているかが重要であることが示唆された。