人が他者に対して抱いている無意識的かつ多面的なイメージを意識化させることは, 他者との関わりにおける自身のあり方に目を向けさせ, 自己理解を促すものとなる可能性がある。こうした機会は, 青少年が自己を確立していく上でも重要なものとなる。本研究では, 「あなたにとっての他者」というテーマで大学生に「九分割統合絵画法」(森谷, 1986)を実施し, これによって描き手の対人関係のあり方についての理解を促すための視点を明らかにする。研究1では, 本法に特有の描画内容を見いだし, 描き手が日常的に接している他者との関わり方やそうした関わりによって生じる感情や考え, あるいは他者全般に対するイメージなどが示されやすいことが明らかになった。研究2では, 描画後の質問によって描画を振り返らせることで, 自身の他者との関わり方や対人関係の特徴に関する気づきや自己理解が促される可能性があることが示唆された。以上のことから, 青少年に対して九分割統合絵画法を用いて「他者イメージ」を描かせることの意義を明らかにすることができた。