本稿では,算数と漢字につまずきを感じている児童に対して認知カウンセリングの手法に基づいて心理教育的援助を行った事例について報告する。クライアントAは,小学校5年の男児であった。援助は5か月間,週に1度,全15回行った。アセスメントにより,Aの学習面の問題として,算数で用いられる言葉の意味が十分に理解でないこと,計算ミスが多いこと,漢字を正確に覚えられないこと等が確認された。学校生活面の問題としては,忘れ物が多いことが挙げられた。また,学習意欲と自己効力感がかなり低く,注意・集中および記憶に関わる能力も低いことが確認された。よって,Aの特性を考慮した上で,ミスを低減するための方略,漢字を覚えるための方略,忘れ物をしないための方略を提案し,学習意欲や自己効力感の向上を重視した援助を行った。その結果,最終テストは初回テストよりも大幅に得点が上がり,学習意欲と自己効力感も事前評価より高くなっていた。従って,Aに対する一連の援助は有効に働いたと考えられ,これまでの援助を踏まえたさらなる援助の可能性が指し示された。