小島・深田(2011a)の帰国子女に関する適応研究の結果に,帰国してからの母国での生活期間(滞在期間)の長さの影響が推測されると小島・深田(2011c)は指摘した。小島・深田(2011a)と同データを用いた小島・深田(2011b)の帰国子女に関する態度研究の結果についても,同様に,帰国後の生活期間の長さの影響が推測された。そこで,本研究では,小島・深田(2011c)に倣い,帰国後の生活期間を統制するため,帰国後の滞在期間が比較的短い帰国子女を対象に,母国とホスト国に対する態度の「出国前-滞在中-帰国後」の変化,両国に対する態度を組み合わせた態度類型の出現率とその変化,態度の規定因について再検討した。その結果,各国に対する態度は時期を通して変化しなかったが,態度類型は時期を通して変化していた。母国肯定・ホスト国否定型は,出国前に比べて滞在中に増加したが,帰国後は減少し元の比率に戻り,母国否定・ホスト国肯定型は,出国前に比べて滞在中に増加し,帰国後は変化しなかった。本研究と先行研究の結果の間接的な比較から,帰国後の生活期間の長さは,態度類型の出現率とその変化に影響している可能性が示唆された。