本研究は、Professionの生成と継承に関する第二研究として、Erikson(1950)の精神分析的個体発達分化の図式の視点から、陶器職人の熟達のプロセスを実証的に検討した。沖縄県読谷壷屋焼の代表的な陶芸家である島袋常秀教授に対する個人面接から得られた語りを師弟関係に重点をおいて分析した。工房への入門から独立までのプロセスにおいて、入門の主体性、作陶の全工程に責任をもつこと、師を「見て技を体得する」こと、美を感じ受けとめる力とそれを消化し作品として生みだす展開力など、7つの重要な課題が見出された。個体発達分化の図式におけるI~V段階の心理社会的テーマが、専門的職業の次元でも再度重要な意味をもつことが示された。また、職人のProfbssional workの重要な課題である職業世界における「基本的信頼感」と感性を支える沖縄の文化的風土について考察した。