本研究は, 統合失調症患者家族におけるケア役割受容過程を検討することを目的とした。本研究におけるケア役割受容過程は「発病以降体験する, 患者との関係やケアへの取り組みから生じる心理的変容過程」と定義した。統合失調症患者の親13名に半構造化面接を行った結果, ケア役割受容過程として, 「疑惑」, 「ショック」, 「納得」, 「混乱」, 「自閉」, 「悲嘆」, 「バランス」, 「奮闘」, 「交流」, 「視点の獲得」, 「見守り」, 「あきらめ」, 「価値づけ」の13の局面が見出された。これらの局面の推移を時系列に沿って分析した結果, 統合失調症患者の親におけるケア役割受容過程の仮説モデルが導き出された。ケア役割受容過程の初期の段階において親子の距離は近く, 親は子どもの状態に情緒的に巻き込まれがちである。「奮闘」や「交流」, 「バランス」における作業を通じ, 親は症状, 薬あるいは異常行動時の気持ちを理解する, という視点を獲得することによって, 子どもをより対象化して捉える「見守り」以降の段階へ推移するというプロセスが認められた。