眼球運動と視野の広さのトレーニングを中心とした, 簡易な速読トレーニングを作成し, 大学生27名に実施した。文章の難易度や文字方向(縦書き・横書き)によってトレーニング効果が異なるかどうかも検討した。(a)眼を素早く流暢に動かす眼球運動トレーニング, (b)視野を広げ, 一度の注視で広範囲の情報を得る視野トレーニング, (c)素早く読むことに慣れる実践トレーニングの3ステップから構成されたトレーニングを, 1日5-10分ずつ3週間行った。トレーニングを受けた群のほうが, 受けなかった群よりも, 全トレーニング後の読み速度が速かった。ステップごとにみると, 視野を広げるトレーニングの後に, 特に読み速度が速くなった。文章の難易度別にみると, 難しい文章においてはトレーニング効果がみられなかったが, 易しい文章において読み速度が速くなった。さらに文字方向別にみると, 全体的に, 縦書きの文章において, 横書きの文章におけるよりも読み速度が速い傾向があったものの, 文字方向とトレーニングの効果の交互作用はみられなかった。簡易なトレーニングであっても, 特に視野を広げるトレーニングが, 読み速度を上げるのに有効であったといえる。