本研究では, 中学生の相談行動を抑制する要因を援助要請行動の生起過程モデル(高木, 1997)に基づいて検討した。悩み経験の有無と相談経験の有無を組み合わせて, 中学生377名を悩み経験あり・相談あり群(97名), 悩み経験あり・相談なし群(118名), 悩み経験なし群(162名)の3群に分類し, 相談行動の実行・回避に関する3つの要因(利益, コスト, 相談スキル)について群間比較を行った。その結果, 悩みがあってもその悩みを誰にも相談しなかった悩み経験あり・相談なし群は, 他の2群よりも相談によって得られる利益(悩みが解決する等)を低く評価し, 相談することに伴うコスト(悩みを他の人にばらされる等)を高く評価することが明らかになった。これらの結果から, 中学生の相談行動を抑制する要因は, 相談するためのスキルの欠如ではなく, 相談することに伴う利益とコストの認知的評価にあると示唆された。