本研究では, 大学生87名を対象に, 時間的遅延によって金銭的価値を割引く傾向(価値割引率)と2側面の楽観性(気楽さと前向きさ)との関連を検討した。相関分析を使用して価値割引率と2側面の楽観性との相関関係を検討したところ, 有意な相関係数はほとんどみられなかった。しかし, 2側面の楽観性得点に基づいて4群を構成し, 価値割引率を比較したところ, 気楽さ得点のみが高い気楽さ優位群(19名)が前向きさ得点のみが高い前向きさ優位群(29名)よりも価値割引率が高いことが明らかになった。気楽さと前向きさの得点が同程度であった両高群(23名)と両低群(16名)はこれら2群の中間の価値割引率を示した。これらの群間差から楽観性の中でも物事に対して「このくらい大丈夫だろう」等と考える傾向を示す気楽さのみが高い者ほど, 将来の見通しを甘く見積もる傾向にあると示唆された。